ナノリットルコアと抗酸化性磁性液体シェルを持つ
コアシェルエマルションの作製と制御

内田 幸明
(大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻化学工学領域 准教授)

2021年3月18日木曜日

光を当てると中身が飛び出すカプセル

2017年に博士課程を修了した岩井陽典君の論文がAdvanced Photonics Researchに掲載されることが決まりました。Advanced Photonics Research誌はWiley社が出版するOpen Access論文誌です。

題名は"Controlled Release of Photo-Responsive Nematic Liquid Crystalline Microcapsules"です。link

この論文では、以前解説したコアシェルW/O/WダブルエマルションのシェルのOilの部分が、光に応答する液晶になっている液晶カプセルに光を当てると、中の水滴が飛び出す仕組みを持たせたというのが、この論文の趣旨です。

詳しい説明の前に、動画を御覧ください。


順番に説明していきます。

一般に液晶ディスプレイに利用されているネマチック液晶と呼ばれる一番液体に近い液晶です。分子が同じ方向を向いて揃っていますが、動くこともできる状態です。

この研究のカプセルのシェルの部分はネマチック液晶でできています。バスケットボールの縫い目のように、球面に沿って分子が並ぶと、縫い目の交点のように分子がどちらを向いていいかわからない場所がでてきます。これが「転傾」と呼ばれる分子配向の欠陥です。


欠陥と言われると、そこには何もないのではないかと思われがちですが、液晶の転傾には分子がいます。ただ、その分子がどちらを向いていいかわからない状態になっているということです。

球面に分子を並べると必ずできてしまう転傾ですが、液晶分子は周りと同じ方向を向いた方が安定であるため、転傾は必ず周りより不安定になります。

また転傾の周りは分子の配向が歪んでいますが、これも同じ方向を向きたい分子から見ると好ましい状況ではありません。二つの転傾が近づくと、その間では配向の歪みがさらに強くなります。そのため、通常は転傾同士が近づくことはできません。

普段は液晶分子と同じ棒状の形状をしており、光が当たると折れ曲がる分子として、アゾベンゼンがよく知られています。アゾベンゼン部位を持つ化合物を液晶に添加することで、光を当てると液晶の配向秩序が乱れる性質が現れます。

この研究でカプセルのシェルに使われているネマチック液晶にはアゾベンゼン部位を持つ化合物が添加されています。転傾が集まっている部分に光を照射すると、その部分の配向を乱すことになります。

光が当たると、転傾と転傾の間の分子の配向が乱れることで、転傾同士が反発する力が弱まり、転傾同士が接近します。これをきっかけに転傾が集まったところに穴ができて、中身が飛び出す、という仕掛けになっています。

詳しくは、本文を御覧ください。
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この論文は、Advanced Photonics Research誌のInside Front Coverに選ばれました。こちらも御覧ください。
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