ナノリットルコアと抗酸化性磁性液体シェルを持つ
コアシェルエマルションの作製と制御

内田 幸明
(大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻化学工学領域 准教授)

2015年10月6日火曜日

最新の研究成果が雑誌の裏表紙を飾りました

私が指導していた卒業生の松本龍也君と行った研究の成果がJournal of Materials Chemistry Cに掲載され、当誌の裏表紙に選定されました。表紙の作製は、本論文の共著者で現在D1の秋田拓也君にも手伝ってもらって、完成しました。
以前にも書きましたが、Journal of Materials Chemistry C誌はイギリス王立化学会が出版する論文誌です。
題名は"Ion Conductive Properties in Ionic Liquid Crystal Confined in Porous Membrane"です。

穴の空いた膜にイオン液晶を詰める時に、詰め方によって伝導度が異なることを見出したというのが、論文の内容です。
イオン液晶は、イオン液体の仲間ですが、イオン液体と違って層構造を持っています。層に沿ってイオンが並んでいるため、層に垂直な方向と、層に平行な方向では、イオン伝導度が異なります。 
この性質を利用して、垂直に真っ直ぐな穴が空いた膜に配向剤を塗って、イオン液晶を詰めることで、イオン伝導度の異なる膜が出来たというのが、この論文の趣旨です。
順番に説明していきます。
前回も少し出てきましたが、皆さん、「イオン液体」はご存知でしょうか。身近なイオン性の物質といえば、食塩ですが、食塩の融点は800℃です。それに対して、イオン液体は別名「常温溶融塩」とも呼ばれるように室温域で液体となるイオン性の物質です。イオンなのに液体です。電荷を持ったイオンが動けるので、イオン伝導が起こります。
イオン液晶はこのイオン液体を液晶化したものです。液晶は主に分子から出来た物質の液体と結晶の間の状態なのですが、結晶のように分子の向いている方向が揃っているにも関わらず、分子が動けるというのが特徴です。この二つの特徴を併せ持つために、液晶ディスプレイとして光をON/OFFする機能を得ることが出来ます。
イオン液体のイオン伝導には方向によって違いはありませんが、イオン液晶はイオンで出来た液晶であるため、イオンが配向しています。そのため、イオン伝導が方向によって異なります。
この論文では、膜に垂直に開いた無数の穴の中にイオン液晶を入れて、膜にイオン伝導性をもたせているのですが、その際、穴の表面の処理を行うことで、イオン伝導度の高い状態と低い状態を作り分けることができることを示しました。
イオン液晶を膜で制御して、同じ材料で違う伝導度のものを作るというのは、ありそうでなかった研究で、世界で初めての研究成果ということになります。
この方法を応用して、磁場や電場を掛けて分子の揃っている向きを変化させられるようにできれば、伝導度をスイッチできる膜ができると考えています。