ナノリットルコアと抗酸化性磁性液体シェルを持つ
コアシェルエマルションの作製と制御

内田 幸明
(大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻化学工学領域 准教授)

2014年11月5日水曜日

准教授昇任

2014年10月1日付で現所属先の大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻化学工学領域にて准教授に昇任しました。

http://www.cheng.es.osaka-u.ac.jp/nishiyamalabo/member/357.html


さきがけ研究やそれ以外の研究には変化はありませんが、
講義や運営に関わる業務が増えてくるので、
研究活動をより効率的に進めていきたいと考えています。

ご報告が一か月以上遅れてしまい申し訳ございませんでした。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

2014年6月23日月曜日

投稿した論文が雑誌の表紙に選ばれました

私が指導するD1の岩井陽典君の論文がJournal of Materials Chemistry Cの表紙に選定されました。表紙の作製は私と岩井君で協力して、4日ほど掛かりました。
Journal of Materials Chemistry C誌はイギリス王立化学会が出版する論文誌です。
題名は"Chemiluminescence Emission in Cholesteric Liquid Crystalline Core-shell Microcapsules"です。

この論文では、前回お話したコアシェルW/O/WダブルエマルションのOilの部分が、液晶になっている液晶カプセルを扱います。上の表紙では、濃い青色で示してある部分です。
この液晶はコレステリック液晶と呼ばれるものですが、らせん構造た特殊な液晶です。一般に液晶ディスプレイに利用されているものとは少し異なります。らせん構造の周期がある特定の長さのときに、光を強く反射する性質を持ちます。
この液晶カプセルに過酸化水素を検知して光る仕組みを持たせたというのが、この論文の趣旨です。
順番に説明していきます。

前回も少し出てきましたが、皆さん、ルミノール試薬というのはご存知でしょうか。そうです、犯罪捜査の時に血液がついているかどうかを調べるアレです。ルミノールと過酸化水素を混ぜて、血液に吹きかけると、血液の中の金属イオンによって、反応が進み、発光が起きます。
詳しく言うと、金属イオンが触媒となって過酸化水素がルミノールを酸化して、その生成物が出来たときにすでに励起状態となっており、基底状態になる時に発光するという仕組みです。
このような発光を化学発光といって、ホタルが光るのも化学発光です。余談ですが、少し前に我が家の前にもたくさんのホタルが飛んでいました。

この論文では、カプセルの中で化学発光反応を起こして、その光をコレステリック液晶で閉じ込め、エネルギーを集めて一気に特定の波長の光として放出することで、化学発光を利用した過酸化水素の検出限界を向上しようというのが目的です。
そのために、カプセルの中にルミノールと金属イオンを入れた液晶カプセルを作りました。このような液晶カプセルは世界初のものです。
そして、実際に過酸化水素を加えると、カプセルを浸透して他の液晶で出来たカプセルのものと比較して、強く光ることがわかりました。
現在、より強く光らせる方法を模索中です。

この研究の元になっているのは、コレステリック液晶のカプセルの全方位レーザーの研究です。私たちが昨年Advanced Materials誌に報告したものですが、コレステリック液晶のカプセルの作製自体も我々が最初に成功しました。良かったら、こちらの論文から読んでみてください。

2014年4月28日月曜日

内部の酸化を防ぎ、磁石にくっつく、金属を含まないマイクロカプセル

国際科学技術財団に助成いただいて研究を行ってきた研究の成果がようやく形になりました。

題名は"Magnetically Transportable Core-Shell Emulsion Droplets with Antioxidative All-Organic Paramagnetic Liquid Shell"で、 Journal of Materials Chemistry B誌に掲載が決まりました。

やさしい科学技術セミナーでお話した磁石にくっつく液体のお話です。

コアシェルW/O/Wダブルエマルションというものがあります。
下の絵にあるように、中に水(Water)、真ん中に油(Oil)、外に水(Water)
という構造をもつもので、論文ではマイクロカプセルと呼んでいます。

私たちの研究室ではマイクロ流体デバイスと呼ばれる装置に三つの流体を流して、
マイクロカプセルを作っています。
このデバイスは私がHarvard大学のD. A. Weitz教授の下に留学していたころに修得したもので、
論文では、磁石にくっつく液体をシェル部の油として用いることで、
磁石にくっつくマイクロカプセルを作っています。
過去の研究として報告されている磁石にくっつくマイクロカプセルは、
酸化鉄のナノ粒子を分散させた流体が磁石にくっつくのを利用しているものです。
一方、我々が使用している液体はニトロキシドラジカルと呼ばれる有機物で、
下のような構造式で書かれます。

なぜ磁石に引き付けられるのかというと、構造式の中のOの横に点で描かれている
不対電子が原因です。
どういうことかというと、電子は一つでいるときは磁石のような性質を示すのですが、
通常の有機物では磁石としての性質を互いに打ち消すように、
電子が二つずつペアになっています。

一方、ニトロキシドラジカルのOは酸素のことですが、
酸素には結合に使われる電子が二つあるにもかかわらず、
一本しか結合がありません。
つまり、一つだけで孤立した電子の磁石としての性質が打ち消されていないために、
磁石に引き寄せられるようになっているということです。
このような性質を常磁性と呼びます。
通常ラジカルというものは、すぐに外のものとくっついてしまうため不安定です。
しかし、今回使ったニトロキシドラジカルは孤立した電子の周りが覆われているために
長時間安定に存在することができます。

もう一つ大事なことは、このニトロキシドラジカルが抗酸化剤として働く能力を持っていることです。
具体的には活性酸素を分解する能力を持っています。
この研究では、活性酸素と反応することで光を発する
ルミノール(犯罪捜査で血液の検出に用いられるものです)を
マイクロカプセルの中の水に溶かしておいて、
外から活性酸素の供給源となる過酸化水素を添加して
ニトロキシドラジカルが抗酸化剤としてちゃんと働くのかを試してみました。
普通の油で作ったマイクロカプセルでは発光するのに対して、
ニトロキシドラジカルで作ったマイクロカプセルではまったく発光しませんでした。

このニトロキシドラジカルのマイクロカプセルは酸化ストレスの測定の際に、
余計な反応が起きないように対象を保護して、
磁石で動かすことのできる容器になるのではないかと考えて、
現在、研究を次のステップに進めようとしています。

2014年3月13日木曜日

まとめ

ご無沙汰しております。

なかなかブログを書く時間が取れず、申し訳ありません。
久々の投稿がまとめの時期になってしまいました。

頂いた助成金で、申請したときの最低限の成果は出たので、
ただいま論文を投稿中です。

ちゃんと論文が出版されたら、ここに解説記事でも載せようかと考えております。
というわけでブログも続けさせていただくつもりです。
成果の解説については、もうしばらくお待ちください。